「もう30代だし、転職は遅いかもしれない」。そう感じている人は少なくないはずです。しかし、結論から言えば30代の転職は決して遅くありません。むしろ、実務経験と専門性を武器にできる30代は、企業側から見ても採用メリットが大きい年代です。この記事では、データを元に30代の転職市場のリアルを整理し、転職を成功させるために準備すべきことを解説します。
データで見る30代の転職市場
厚生労働省の「令和5年雇用動向調査」によると、30〜34歳の転職入職率は男性9.1%、女性12.4%です。35〜39歳でも男性7.7%、女性10.1%と、20代と比べて大幅に下がっているわけではありません。
| 年齢層 | 転職入職率(男性) | 転職入職率(女性) |
|---|---|---|
| 25〜29歳 | 14.1% | 14.1% |
| 30〜34歳 | 9.1% | 12.4% |
| 35〜39歳 | 7.7% | 10.1% |
| 40〜44歳 | 5.5% | 9.6% |
つまり、30代前半で約10人に1人、30代後半でも約12〜13人に1人が実際に転職しています。「30代で転職する人は少数派」というのは思い込みに過ぎません。
年収はどう変化するのか
転職で気になるのが年収の変化です。リクルートの調査(2025年)によると、30代転職者の約40%が「年収が上がった」と回答しています。一方で約25%は「下がった」と回答しており、転職すれば必ず年収が上がるわけではありません。
30代が企業に求められる理由
20代がポテンシャル採用(将来性重視)であるのに対し、30代は即戦力採用です。企業が30代の転職者に期待しているのは以下のポイントです。
- 実務経験に基づく専門スキル — 「何ができるか」が明確な人材は即戦力として評価が高い
- マネジメント経験 — チームリーダーやプロジェクトマネージャーの経験があると求人の幅が広がる
- 業界知識と人脈 — 同業界の転職なら、業界特有の知識や取引先との関係も資産になる
- 社会人としての基礎力 — ビジネスマナー、コミュニケーション能力、報連相。これらは20代の育成コストを省ける
逆に言えば、「10年間で何も積み上がっていない」という状態が最もリスクです。現職での実績を棚卸しして、自分の「売り」を言語化できるかどうかが転職成功の鍵になります。
30代の未経験転職は可能か
「全くの未経験業界に30代で飛び込めるのか」。これは多くの人が気にするポイントです。結論としては、可能ですが条件があります。
未経験転職がしやすい業界
- IT・Web業界 — 慢性的な人材不足。プログラミングやWebマーケティングのスキルを独学で身につければ、30代でも採用される
- 介護・福祉 — 人手不足が深刻で、年齢を問わず未経験者を積極採用している
- 営業職 — 前職の経験を活かしやすい。営業未経験でも対人スキルがあれば採用されやすい
- コンサルティング — 前職の業界知識が「専門性」として評価される。異業種からの転職が多い業界
未経験転職で覚悟すべきこと
- 一時的な年収ダウン — 未経験である以上、前職と同等の年収を最初から期待するのは現実的ではない
- 年下の上司・同僚 — 新しい業界では自分より若い人が先輩になる。これを受け入れられるかどうか
- 学び直しの負荷 — 業界知識、ツール、用語など、ゼロからのキャッチアップが必要になる
転職エージェントの賢い使い方
30代の転職では、転職エージェントの活用が事実上の標準になっています。ただし、エージェントは「使い方」を間違えると逆効果になります。
エージェントが提供してくれるもの
- 非公開求人へのアクセス — 企業が公開していない求人の約60〜70%はエージェント経由でしか応募できない
- 職務経歴書の添削 — プロの目で「伝わる経歴書」に仕上げてくれる
- 面接対策 — 企業ごとの面接傾向や質問内容を事前に教えてくれる
- 年収交渉の代行 — 自分では言いにくい年収交渉をエージェントが行ってくれる
エージェントを使う際の注意点
- 複数のエージェントに登録する — 1社だけだと担当者の質やカバーする求人に偏りが出る。最低2〜3社は登録しておく
- 担当者との相性が悪ければ変更を申し出る — エージェントのサービスは「担当者の質」で決まる。遠慮せず変更を依頼してよい
- エージェントの推薦を鵜呑みにしない — エージェントは転職が成立すると企業から報酬を得るビジネスモデル。必ずしもあなたに最適な求人を推薦しているとは限らない
- 自分でも求人サイトで情報収集する — エージェント頼みにならず、自分でも市場の相場観を持っておくことが重要
転職前に準備すべき5つのこと
- キャリアの棚卸し — これまでの職歴で「何を」「どの規模で」「どんな成果を出したか」を具体的に書き出す
- 転職の軸を決める — 年収、やりがい、ワークライフバランス、勤務地。全部は手に入らないので優先順位をつける
- 生活費6ヶ月分の貯金 — 退職してから探す場合の安全ネット。在職中に転職活動するのがベストだが、万が一のために
- 職務経歴書のアップデート — 3年以上更新していない人は多い。最新の実績を反映させておく
- 社内で異動の選択肢を検討する — 転職だけが解決策ではない。不満の原因が「会社」ではなく「部署」や「上司」であれば、社内異動で解決する場合もある
まとめ
30代の転職は「遅い」のではなく、「戦い方が変わる」だけです。20代のようにポテンシャルで勝負するのではなく、実務経験と専門性を武器にする。そのためには、自分のキャリアを客観的に棚卸しし、「自分は何ができるのか」を明確に言語化する準備が不可欠です。転職するかどうかはさておき、自分の市場価値を把握しておくこと自体が、キャリアを主体的にコントロールする第一歩になります。