副業を始めたはいいものの、「確定申告って必要なの?」「いくら稼いだら申告するの?」と税金まわりの不安を抱えている会社員は多いはずです。本業の給与は会社が年末調整してくれますが、副業の収入は自分で処理しなければなりません。知らなかったでは済まされないのが税金の世界です。この記事では、副業をしている会社員が最低限押さえておくべき確定申告と税金の基本を整理します。
確定申告が必要になるライン:「20万円の壁」
会社員が副業で確定申告をしなければならない基準は、年間の副業所得が20万円を超えた場合です。ここで注意したいのは「所得」と「収入(売上)」の違いです。
- 収入(売上) — 副業で受け取った金額の合計
- 所得 — 収入から必要経費を差し引いた金額
たとえば、副業のライティングで年間35万円の収入があり、仕事用のパソコン代や通信費などの経費が16万円かかった場合、所得は35万円 − 16万円 = 19万円です。この場合、所得が20万円以下なので所得税の確定申告は不要になります。
副業の「所得区分」を理解する
副業の収入がどの「所得区分」に該当するかによって、確定申告の方法が変わります。会社員の副業でよくあるパターンは以下の3つです。
| 所得区分 | 該当する副業 | 特徴 |
|---|---|---|
| 給与所得 | アルバイト、パート | 源泉徴収票が発行される。2か所以上から給与を受ける場合は確定申告が必要 |
| 雑所得 | ライティング、せどり、アフィリエイト、フードデリバリーなど | 多くの副業がここに該当。経費の計上が可能 |
| 事業所得 | 継続的・本格的に行う事業 | 青色申告で最大65万円の特別控除が受けられるが、開業届の提出が必要 |
国税庁は2022年に通達を改正し、副業の収入が300万円以下の場合は原則として「雑所得」に区分すると明確化しました。ほとんどの会社員の副業は雑所得として申告することになります。
経費として認められるもの・認められないもの
雑所得であっても、副業に直接関連する費用は「必要経費」として収入から差し引くことができます。経費を正しく計上することで所得を減らし、税金を適正な額に抑えられます。
経費として認められやすいもの
- 通信費 — 副業で使用するインターネット回線、スマホ代(副業使用分の按分)
- 消耗品費 — パソコン、マウス、キーボード(10万円未満のもの)
- 書籍・教材費 — 副業に関連する専門書、オンライン講座の受講料
- 交通費 — 取材や打ち合わせのための移動費用
- ソフトウェア・サブスクリプション — 副業に使うツールの利用料
経費として認められにくいもの
- スーツや普段着 — プライベートでも着用できるものは経費にしにくい
- 家賃全額 — 自宅で副業する場合、作業スペースの面積按分は認められるが、全額は不可
- 飲食代全般 — 明確な業務目的がない食事は交際費として認められにくい
住民税の落とし穴:会社バレのリスク
副業が会社にバレるケースで最も多いのが「住民税の増加」です。住民税は前年の所得に基づいて計算され、会社の給与から天引き(特別徴収)されます。副業で所得が増えると住民税の額が上がり、給与計算の担当者に「この人、給与の割に住民税が高いな」と気づかれる可能性があります。
対策:住民税を「普通徴収」に切り替える
確定申告書の第二表に「住民税に関する事項」という欄があります。ここで「自分で納付(普通徴収)」を選択すると、副業分の住民税は会社を通さず、自宅に届く納付書で自分で支払うことができます。
- 確定申告書の第二表の「給与、公的年金等以外の所得に係る住民税の徴収方法」で「自分で納付」にチェックを入れる
- ただし、自治体によっては普通徴収を選択しても特別徴収に統一される場合がある
- 確実を期すなら、確定申告後に住所地の市区町村の税務課に電話して「副業分は普通徴収でお願いします」と確認する
確定申告の流れ(e-Taxがおすすめ)
確定申告の期間は、原則として毎年2月16日から3月15日までです。期限を過ぎると延滞税や無申告加算税がかかる場合があるので、早めの準備が大切です。
ステップ1:必要書類を準備する
- 本業の源泉徴収票(会社から12月〜1月に交付される)
- 副業の収入がわかる資料(支払調書、売上の記録、銀行の入金明細など)
- 経費の領収書・レシート
- マイナンバーカード(e-Taxで電子申告する場合)
ステップ2:収支を計算する
副業の収入から経費を差し引いて所得を算出します。年間を通して記帳しておくのがベストですが、まとめてやる場合は銀行口座の明細とレシートを突き合わせて計算しましょう。エクセルやスプレッドシートで月ごとに整理しておくと楽です。
ステップ3:確定申告書を作成する
国税庁の「確定申告書等作成コーナー」を使えば、画面の案内に従って数字を入力するだけで申告書が完成します。税務署に行く必要はありません。
ステップ4:e-Taxで電子申告する
マイナンバーカードとスマートフォン(またはICカードリーダー)があれば、e-Tax(イータックス)で自宅から申告できます。税務署の行列に並ぶ必要がなく、還付金がある場合は書面提出より早く振り込まれるメリットもあります。
| 申告方法 | メリット | 必要なもの |
|---|---|---|
| e-Tax(スマホ) | 自宅で完結。還付が早い | マイナンバーカード、スマホ |
| e-Tax(PC) | 複雑な申告にも対応 | マイナンバーカード、ICカードリーダー |
| 書面提出 | ネット環境が不要 | 印刷した申告書を郵送または持参 |
よくある疑問Q&A
Q. 20万円以下なら何もしなくていい?
所得税の確定申告は不要ですが、住民税の申告は必要です。お住まいの市区町村の窓口またはウェブサイトで住民税の申告手続きを確認してください。
Q. 確定申告をしなかったらどうなる?
本来申告が必要なのにしなかった場合、「無申告加算税」として納付すべき税額の15〜20%が上乗せされます。さらに、納付期限を過ぎた日数に応じて「延滞税」も加算されます。悪質な場合は重加算税(35〜40%)が課される可能性もあります。
Q. 副業が赤字の場合は?
雑所得の赤字は、原則として他の所得と損益通算(相殺)することはできません。つまり、副業が赤字でも本業の給与から税金が戻ってくることはありません。事業所得として認められれば損益通算が可能ですが、前述の通り、副業レベルでは雑所得に区分されるケースがほとんどです。
迷ったら税理士に相談する
副業の税金は、個人の状況によって判断が異なるケースが多くあります。「この支出は経費になるのか」「事業所得として申告できるのか」「ふるさと納税との併用はどうなるのか」など、判断に迷う場合は税理士に相談するのが最も確実です。
最近は副業に特化した税理士の無料相談や、スポットで確定申告だけ依頼できるサービスも増えています。自分で調べて間違えるリスクを考えれば、専門家への相談は十分に元が取れる投資です。
まとめ
会社員が副業をする際に押さえておくべき税金の基本をおさらいします。
- 副業所得が年間20万円を超えたら確定申告が必要(所得税)
- 20万円以下でも住民税の申告は必要
- 「収入」ではなく「収入 − 経費 = 所得」で判断する
- 住民税の普通徴収を選択すれば会社バレのリスクを軽減できる
- e-Taxを使えば自宅から電子申告が可能
- 迷ったら税理士に相談するのが最も安全
副業で稼いだお金を手元にしっかり残すためにも、税金の知識は避けて通れません。この記事を参考に、正しく申告して安心して副業に取り組んでください。