1日8時間以上パソコンの画面を見続けるデスクワーカーにとって、目の疲れは避けて通れない悩みです。夕方になると目がかすむ、肩こりや頭痛がひどい、目の奥がズーンと重い。こうした不調を「仕方ない」と放置していませんか。眼精疲労は単なる疲れ目とは異なり、休息をとっても回復しにくい状態を指します。放っておくと集中力の低下や慢性的な頭痛、さらには視力の悪化につながることもあります。
この記事では、デスクワーカーが今日から実践できる眼精疲労対策を7つの習慣として整理しました。原因を正しく理解した上で、自分の生活に取り入れやすいものから始めてみてください。
なぜデスクワークで目が疲れるのか
人間の目は本来、遠くを見るように設計されています。狩猟採集の時代には遠方の獲物や危険を察知するために使われていた目が、現代ではわずか50〜70cm先のディスプレイを1日中見つめ続けている。この「近くを見続ける」行為そのものが、目にとって大きな負担です。
近くのものにピントを合わせるとき、目の中にある毛様体筋(もうようたいきん)という筋肉が緊張し続けます。8時間デスクワークをするということは、この小さな筋肉を8時間収縮させ続けているのと同じです。筋トレで腕の筋肉が疲れるように、毛様体筋も疲労して、ピント調節がうまくいかなくなります。これが「目がかすむ」「ぼやける」の正体です。
さらに、パソコン作業中はまばたきの回数が通常の約3分の1に減ることがわかっています。通常は1分間に15〜20回まばたきをしますが、画面を凝視しているときは5〜7回にまで減少します。まばたきが減ると涙の膜が乾いてドライアイになり、目の表面が傷つきやすくなります。オフィスのエアコンによる乾燥も追い打ちをかけます。
眼精疲労のサイン
眼精疲労は自分では気づきにくいことがあります。「これくらい普通だろう」と思っている症状が、実は眼精疲労のサインかもしれません。以下のチェックリストで確認してみてください。
- 目の症状 — 目がかすむ、しょぼしょぼする、充血する、まぶしく感じる、目の奥が痛い
- 体の症状 — 肩こり、首こり、頭痛(特にこめかみや後頭部)、吐き気
- 精神的な症状 — 集中力の低下、イライラ、倦怠感、やる気が出ない
特に注意したいのが、目以外の場所に出る症状です。慢性的な肩こりや頭痛の原因が、実は眼精疲労だったというケースは少なくありません。マッサージに通っても肩こりが改善しない人は、目の疲れを疑ってみる価値があります。
また、夕方以降に症状が強くなる傾向がある場合、1日の蓄積によるものと考えられます。朝は問題なく見えるのに、午後になるとピントが合いにくくなる。そんな経験があるなら、日中の目の使い方を見直すタイミングです。
習慣1:20-20-20ルールを実践する
アメリカの眼科学会(American Academy of Ophthalmology)が推奨している「20-20-20ルール」は、最もシンプルで効果的な眼精疲労対策です。ルールは簡単で、20分ごとに、20フィート(約6メートル)以上離れたものを、20秒間見る。これだけです。
20分間近くを見続けて緊張した毛様体筋を、遠くを見ることでリラックスさせる。たった20秒でも、この切り替えが目の筋肉にとって大きな休息になります。窓の外の建物でも、オフィスの反対側の壁でも構いません。ポイントは「意識的にピントを遠くに移す」ことです。
20-20-20ルールは「覚えやすいが忘れやすい」のが難点です。実際、多くの人が最初の数日は実践できても、気がつくと忘れています。対策としては、デスクの目立つ場所に付箋を貼る、パソコンのデスクトップに壁紙として書いておくなど、視覚的なリマインダーが有効です。
習慣2:ディスプレイの設定を最適化する
多くの人がディスプレイの設定をデフォルトのまま使っていますが、適切な調整をするだけで目への負担は大幅に軽減できます。まず確認すべきは画面の明るさです。オフィスの照明と画面の明るさに差がありすぎると、目は常に明暗の調整を強いられて疲労します。白い画面を表示したとき、それが「光源」のように感じるなら明るすぎ、くすんで見えるなら暗すぎです。
次に文字サイズです。小さい文字を読むために目を細めたり、画面に顔を近づけたりしていませんか。ブラウザの表示倍率を110〜125%に上げるだけで、読みやすさが劇的に改善します。「画面が狭くなる」と抵抗を感じるかもしれませんが、目の健康と引き換えにする価値はありません。
| 設定項目 | 推奨値 | 調整のポイント |
|---|---|---|
| 画面の明るさ | 周囲の明るさと同程度 | 白い画面が「光源」に見えない明るさに。部屋の明るさに合わせて随時調整する |
| コントラスト | 60〜70% | 高すぎると目が疲れる。文字がくっきり読めるギリギリまで下げる |
| 色温度 | 昼間: 6500K / 夜: 4000K前後 | 夜間は暖色(低い色温度)に自動切替する機能を使う |
| 文字サイズ | ブラウザ110〜125% | 目を細めずに自然に読めるサイズが基準 |
| リフレッシュレート | 可能なら120Hz以上 | 60Hzのちらつきが気になる人に特に有効 |
また、画面の反射(グレア)にも注意が必要です。窓からの光が画面に映り込んでいると、目はコンテンツと反射の両方にピントを合わせようとして余計に疲れます。ディスプレイの角度を調整するか、アンチグレアフィルムを貼ることで対処できます。
習慣3:ブルーライト対策をする
ブルーライトはディスプレイやLED照明から発せられる波長380〜500nmの青色光です。ブルーライトが目に悪いかどうかは議論がありますが、少なくとも「夜間のブルーライトが睡眠の質を下げる」ことは複数の研究で確認されています。メラトニン(睡眠ホルモン)の分泌を抑制するためです。
そして、睡眠の質が下がれば目の疲労回復も遅れます。つまり、ブルーライト対策は「直接的な目の保護」だけでなく「睡眠を通じた回復力の維持」という観点でも重要です。
対策としてまず取り入れやすいのが、OSの夜間モード機能です。WindowsのNight Light、macOSのNight Shift、iPhoneのNight Shiftなど、主要なOSには標準搭載されています。日没の時間帯から自動的に画面を暖色系に変える設定にしておけば、意識しなくてもブルーライトのカット量を増やせます。
習慣4:目のストレッチを取り入れる
体をほぐすストレッチがあるように、目の筋肉もストレッチでほぐすことができます。以下の3つは場所を選ばず、1分以内でできるものです。昼休みや20-20-20ルールのタイミングに合わせて実践してみてください。
遠近ストレッチ
親指を目の前30cmに出し、親指にピントを合わせます。3秒キープしたら、次に3メートル以上先のものにピントを合わせて3秒キープ。これを10回繰り返します。毛様体筋の収縮とリラックスを意識的に繰り返すことで、凝り固まった筋肉をほぐすトレーニングになります。
ぐるぐるストレッチ
目をゆっくりと時計回りに大きく回します。上→右→下→左を1周として、5周回したら反時計回りに5周。目を動かす外眼筋(がいがんきん)を動かすことで血行が促進されます。速く回す必要はありません。ゆっくり、大きく動かすことがポイントです。
ぎゅっとパチパチストレッチ
目をぎゅっと強く閉じて2秒間キープし、パッと大きく開きます。これを5回繰り返します。まばたきの力を意識的に強くすることで、涙の分泌を促してドライアイを緩和します。目の周りの血行改善にも効果があります。デスクワーク中でも周囲に気づかれにくい動きなので、取り入れやすいストレッチです。
習慣5:デスク環境を見直す
どれだけ目のケアを頑張っても、デスク環境が悪ければ効果は半減します。特に重要なのがディスプレイの位置と距離です。画面が近すぎる、高すぎる、角度が合っていない。これらはすべて目だけでなく首や肩にも負担をかけます。
ディスプレイは目から50〜70cmの距離に置くのが理想です。腕を伸ばして指先がちょうど画面に届くくらいが目安になります。高さは画面の上端が目の高さと同じか、やや下になる位置が適切です。画面を見上げる姿勢はまぶたが大きく開いてドライアイを悪化させます。
| チェック項目 | 理想の状態 | NG例 |
|---|---|---|
| 画面との距離 | 50〜70cm(腕を伸ばした程度) | 40cm以下に近づいている |
| 画面の高さ | 画面上端が目の高さ以下 | 画面を見上げている |
| 照明の位置 | 画面の背後や真上を避ける | 窓を背にして画面に反射している |
| 室内の湿度 | 40〜60% | エアコン直下で乾燥している |
| エアコンの風 | 顔に直接当たらない | 風が目に当たりドライアイ悪化 |
ノートパソコンをメインで使っている人は、外付けキーボードとノートPCスタンドの導入を強くおすすめします。ノートパソコンの画面は低い位置にあるため、どうしても視線が下向きになり、首を前に突き出す姿勢になります。スタンドで画面を持ち上げるだけで、姿勢と視線の角度が大幅に改善されます。
習慣6:目に良い栄養を摂る
目の健康を支える栄養素は複数ありますが、デスクワーカーが特に意識したいのはルテイン、アスタキサンチン、ビタミンA、オメガ3脂肪酸の4つです。これらは食事から摂取するのが基本です。
| 栄養素 | 働き | 多く含む食品 |
|---|---|---|
| ルテイン | 網膜の黄斑部を保護。ブルーライトのダメージを軽減 | ほうれん草、ケール、ブロッコリー、卵黄 |
| アスタキサンチン | 毛様体筋の疲労を軽減。ピント調節力の維持 | 鮭、エビ、カニ、いくら |
| ビタミンA | 涙の成分を安定させ、角膜を保護 | レバー、うなぎ、にんじん、かぼちゃ |
| オメガ3脂肪酸 | 涙の油層を安定させドライアイを予防 | サバ、イワシ、サンマ、アマニ油 |
昼食に鮭の塩焼き定食を選ぶ、サラダにほうれん草を入れる、おやつにブルーベリーを食べる。特別な食事制限は必要ありません。日常の食事で意識的にこれらの食品を選ぶだけで十分です。
サプリメントは、食事だけでは十分に摂れない場合の補助として検討する位置づけです。特にルテインは1日6〜10mg程度の摂取が推奨されていますが、これをほうれん草だけで摂ろうとすると毎日かなりの量が必要になります。食事で足りない分をサプリメントで補うのは合理的な選択です。ただし、サプリメントはあくまで補助であり、食事の代わりにはなりません。
習慣7:定期的に眼科を受診する
ここまで紹介した6つの習慣をすべて実践しても、眼精疲労が改善しない場合があります。それは、目そのものに問題がある場合です。メガネやコンタクトの度数が合っていない、乱視が矯正されていない、ドライアイが重度になっている。こうした問題はセルフケアでは解決できません。
特にデスクワーカーに多いのが「度数のミスマッチ」です。免許更新用やかつて作ったメガネの度数が、現在のデスクワーク中心の生活に合っていないケースは非常に多い。遠くを見るための度数と、50cm先の画面を見るための度数は異なります。眼科でデスクワーク用の度数を相談すれば、「デスクワーク用メガネ」という選択肢を提案してもらえることもあります。
また、40代以降は緑内障のリスクが上がります。緑内障は初期に自覚症状がほとんどなく、気づいたときには視野が欠損しているケースが少なくありません。眼圧検査や眼底検査を含む定期検診は、将来の目の健康を守るための投資です。20代・30代のうちから「目の健康診断」を習慣にしておくことを強くおすすめします。
まとめ
デスクワーカーの眼精疲労対策は、特別な道具や費用がなくても始められるものがほとんどです。20-20-20ルールで定期的に目を休める、ディスプレイの設定を最適化する、目のストレッチを取り入れる。どれも今日から実践できるシンプルな習慣です。
重要なのは「完璧にやろうとしない」ことです。7つの習慣をすべて一度に始める必要はありません。まずは20-20-20ルールとディスプレイの設定見直しの2つから始めて、慣れてきたら他の習慣を追加していく。1つでも習慣化できれば、それだけで目の疲れ方は変わってきます。目は一生使う器官です。毎日少しずつでもケアする習慣を、今日から始めてみてください。