リモートワークが定着して数年。通勤のストレスからは解放されたものの、「腰が痛い」「目が疲れる」「なんとなく体がだるい」という声は増え続けています。オフィスでは意識しなくても発生していた「歩く」「階段を上る」「人と話す」という行動が、自宅勤務ではほぼゼロになるからです。この記事では、リモートワーカーが直面しやすい体の不調と、その具体的な対策を5つに整理しました。
リモートワークで起きる体の不調
日本労働安全衛生総合研究所の調査によると、在宅勤務者の約65%が「身体的な不調を感じている」と回答しています。特に多いのが以下の4つです。
| 不調 | 在宅勤務者の発生率 | 主な原因 |
|---|---|---|
| 腰痛・肩こり | 約58% | 不適切な椅子・姿勢の固定化 |
| 眼精疲労 | 約52% | 画面との距離が近い・休憩不足 |
| 運動不足 | 約47% | 通勤がなくなり1日の歩数が激減 |
| メンタル不調 | 約33% | 孤立感・オンオフの切り替え困難 |
これらの不調は独立して起きるのではなく、互いに連鎖します。運動不足で血行が悪くなり、腰痛が悪化し、痛みでストレスが溜まり、メンタルに影響するという悪循環です。
工夫1:デスク環境を整える
リモートワークの体の不調の多くは、デスク環境が原因です。ダイニングテーブルとローソファで8時間作業していれば、腰が壊れるのは時間の問題です。完璧な環境を一度に揃える必要はありませんが、以下の3つは優先的に改善してください。
椅子
最も投資すべきアイテムです。座面の高さが調整でき、ランバーサポート(腰の部分の突起)がある椅子を選びましょう。予算は2〜3万円あれば十分な品質のものが手に入ります。逆に、1万円以下の椅子は長時間の作業には向いていません。「1日8時間座るもの」と考えれば、ベッドと同じくらいの投資価値があります。
モニターの高さ
ノートパソコンの画面を覗き込む姿勢は、首と肩に大きな負担をかけます。目線の高さにモニターの上端が来るのが理想です。外部モニターを使うか、ノートPCスタンドで高さを上げ、外付けキーボードとマウスを使う方法が現実的です。
デスクの高さ
椅子に座ったとき、肘が90度に曲がる高さがデスクの適正な高さです。多くの一般的なテーブルは高さ70cmですが、身長によっては合わない場合があります。昇降式デスクは立ち作業と座り作業を切り替えられるため、腰痛対策として非常に有効です。
工夫2:意識的に休憩を挟む
オフィスでは会議室への移動、同僚との雑談、コーヒーを入れに行くなど、自然に「座っている時間」が分断されていました。自宅では意識しないと3〜4時間ぶっ通しで座りっぱなしになります。
おすすめは「ポモドーロ・テクニック」の応用です。25分作業したら5分休憩。この5分間は必ず立ち上がって、トイレに行く、水を飲む、窓の外を見る、軽いストレッチをするなど、体を動かすことに充てます。
- 25分ごとに立つ — タイマーアプリを使って強制的にリマインドする
- 立ったら伸びをする — 両手を上に伸ばして5秒キープ。これだけで肩甲骨周りがほぐれる
- 窓の外を20秒見る — 「20-20-20ルール」。20分ごとに20フィート(約6m)先を20秒見ると眼精疲労が軽減される
工夫3:1日30分の運動を確保する
通勤がなくなると、1日の歩数が平均3,000〜4,000歩から1,000歩以下に激減するというデータがあります。これは入院患者レベルの活動量です。
理想は毎日30分の有酸素運動ですが、いきなりジム通いを始めるのはハードルが高い。まずは以下のどれか一つから始めてみてください。
- 朝の散歩15分 — 「通勤の代わり」として始業前に外を歩く。日光を浴びることでセロトニンの分泌も促進される
- 昼休みの10分ウォーキング — 食後に近所を一周するだけで午後の集中力が変わる
- 終業後のストレッチ10分 — YouTubeの「在宅ワーカー向けストレッチ」動画に合わせるだけでOK
- スタンディングデスクで作業 — 午後の2〜3時間を立って作業するだけでもカロリー消費が約15%増加する
工夫4:ブルーライトと目の疲れに対策する
リモートワーカーのモニター使用時間は1日平均8〜10時間に達します。これに加えてスマートフォンの利用時間を合わせると、1日中画面を見ていることになります。
科学的に効果が確認されている対策
- 画面の明るさを環境に合わせる — 部屋の明るさと画面の明るさの差が大きいほど目に負担がかかる。自動調光機能をオンにするか、こまめに手動で調整する
- 文字サイズを大きくする — 小さい文字を読むために目を細める動作が眼精疲労の原因。OS設定で文字サイズを1段階上げるだけで負担が軽減される
- 目薬を常備する — 画面注視中はまばたきの回数が通常の約1/3に減少する。人工涙液タイプの目薬で定期的に潤いを補給する
- モニターと目の距離を50〜70cm確保する — 腕を伸ばしたときに指先が画面に触れる距離が目安
効果が限定的なもの
ブルーライトカットメガネについては、2023年のコクラン共同計画(医学的エビデンスの評価機関)のレビューで「眼精疲労の軽減に関する十分なエビデンスはない」と結論づけられています。完全に無意味とは言えませんが、過度な期待は禁物です。上記の基本的な対策の方が優先度は高いです。
工夫5:仕事とプライベートの境界を作る
リモートワークでメンタルに不調を感じる人の多くが、「仕事の終わりがわからない」と回答しています。通勤がないということは、仕事モードとプライベートモードを切り替える物理的なトリガーがないということです。
- 「退勤の儀式」を作る — 終業時刻にPCを閉じて、着替える、散歩する、コーヒーを入れるなど、仕事の終わりを体に覚えさせる
- 仕事用の空間を分ける — 理想は専用の部屋。難しければ、パーテーションや棚でリビングの一角を区切るだけでも効果がある
- 仕事用の通知を時間外にオフにする — SlackやTeamsの通知を終業後は自動でオフにする設定。「見てしまう」を物理的に防ぐ
- 週に1回は外で作業する — カフェやコワーキングスペースで作業する日を作ると、変化が生まれて気分転換になる
まとめ
リモートワークの体調不良は、環境と習慣を整えることで大部分が予防できます。椅子を変える、25分ごとに立つ、朝15分歩く、画面の明るさを調整する、退勤の儀式を作る。5つ全部を一度に始めるのは大変なので、まずは自分が最も不調を感じている部分から1つだけ取り入れてみてください。小さな変化の積み重ねが、半年後の体調を大きく変えます。